■ 日本の2013年度の電子書籍市場規模は前年比28.3%増の936億円、電子雑誌を合わせた電子出版市場は1,000億円超え
2013年度の電子書籍市場規模 (※1) は936億円と推計され、2012年度の729億円から207億円 (28.3%) 増加しています。2012年度にもまして、スマートフォンやタブレット、電子書籍専用端末といった新たなプラットフォーム向け電子書籍市場 (※3) が急速に拡大しており、本格的な拡大期に入っています。また、電子雑誌市場は77億円と推計され、電子雑誌を合わせた電子出版市場は1,013億円となり初めて1,000億円の大台を超えています。
新たなプラットフォーム向け電子書籍市場は、2012年度から421億円増加 (対前年比114.4%増) の789億円と推計されます。スマートフォン 及びタブレットユーザーの増加やテレビCMも含めた電子書籍ストアによる積極的な広告宣伝活動による電子書籍ユーザーの拡大、電子書籍ストアや出版社によ るキャンペーンの拡大と文字ものなどのタイトル拡充によるユーザーの平均購入量の増加等により急成長が続いています。また、ケータイ向け電子コミックと同様に一ページずつではなく一コマずつコミックを見せるライトユーザー向けの電子書籍も好調が続いており、これらのコンテンツを中心に取り扱う電子書籍ストアも売上を伸ばしています。その結果、新プラットフォーム向け電子書籍市場は、市場全体の84.3%を占めるようになっています。
一方、2012年度に新プラットフォーム向け電子書籍市場に逆転されたケータイ向け電子書籍市場は引き続き大幅に市場が縮小しています。2013年度は、2012年度から211億円 (対前年60.0%減) 減少して140億円となっています。スマートフォンへのシフトを上回るペースで公式コンテンツのユーザーが減少していることが大きな要因となっており、さらに広告出稿の減少、公式コンテンツで展開している電子書籍ストアの閉鎖も影響しています。また、新プラットフォームと比較し優先順位が低下していることから、フィーチャーフォン向けコンテンツを制作しない出版社が出始めていることや新刊投入の遅れも見られるようになっています。
[表] 電子書籍市場規模の内訳と電子雑誌市場規模
■ 2018年度には2013年度の約3倍に、電子書籍市場 2,790億円、電子雑誌と合わせた電子出版市場は3,340億円程度と予測
2014年度以降の日本の電子書籍市場は今後も成長を続け、2018年度には2013年度の2.9倍の2,790億円程度になると予測されます。
ケータイ向け電子書籍市場の大幅な縮小により、2014年度には新たなプラットフォーム向け電子書籍が市場のほとんどを担うようになります。今後もスマートフォンやタブレット保有者の増加をベースに、認知度の拡大や利便性の向上による利用率の上昇、紙の書籍との同時発売の増加、電子書籍ストアのマーケティングノウハウの蓄積、電子オリジナルのコンテンツや付加価値のついた電子書籍の販売、セルフパブリッシングの拡大等により、2014年度以降も拡大 が続くことが予想されます。
また、電子雑誌は、配信雑誌数や電子書籍ストアでの取り扱いが拡大しており、月額課金モデルのコミック誌の配信等も始まっています。今後も、大画面で高精細なスマートフォンやタブレットの普及、携帯電話会社による定額制読み放題のサービスの開始とともに、電子雑誌広告市場の形成による電子雑誌配信の本格化なども想定され、引き続き市場の拡大が見込まれます。2018年度には550億円程度になると予測され、電子書籍とあわせた電子出版市場は 3,340億円程度と予測されます。
[図] 電子書籍・電子雑誌の市場規模予測
■ 有料電子書籍利用率は昨年から2.5ポイント増の10.4%
有料の電子書籍利用率は10.4%であり、昨年から2.5ポイント増加しました。また、無料の電子書籍利用者も15.6%へ微増し、電子書籍の経験者は26.0%となりました。タブレットやスマートフォン利用者の利用率が高い傾向は昨年よりも顕著になっており、タブレット利用者の有料電子書籍利用率は28.8% (2013年調査では13.9%)、スマートフォン利用者は13.9% (同10.7%) です。
[図] 電子書籍利用率の推移
[図] スマートフォン・タブレット利用別電子書籍利用率
■ 有料電子書籍利用率は昨年から2.5ポイント増の10.4%
有料の電子書籍利用者が閲覧に利用している端末は、「スマートフォン」 が昨年から2.2ポイント増の54.0%でトップであり、「タブレット」 が11.2ポイント増の46.0%、「パソコン」 が32.8%と続いています。タブレットでの利用が大きく伸びており、内訳をみるとiPad以外のタブレットの利用が特に拡大しています。一方、電子書籍専用端末は18.1%で横ばいとなっています。
[図] 有料の電子書籍利用者が閲覧に利用する端末 (複数回答)
■ 4割のユーザーが複数の電子書籍ストアを利用、ストアの使い分けは 「安い方」 「価格とポイントでお得な方」
有料の電子書籍利用者が半年以内に利用したストア数では、4割のユーザーが複数のストアを利用したと回答しています。複数ストアの利用者にストアの使い分け方を聞いたところ、「価格が安い方で購入する」 が52.9%で最も高く、次いで 「価格とポイントの両方を見てお得な方で購入する」 が36.8%となっています。その後も、キャンペーンやポイントといった項目が続いており、価格やポイントなど直接的なメリットを重視しています。
[図] 半年以内に利用したストア数
[図] 複数ストア利用者の電子書籍ストアの使い分け方 (複数回答)
※1 電子書籍の市場規模の定義 : 電子書籍を 「書籍に近似した著作権管理のされたデジタ ルコンテンツ」 とし、配信された電子書籍 (電子書籍、電子コミック等) の日本国内のユーザーにおける購入金額の合計を市場規模と定義。ただし、電子雑誌、 電子新聞や、教科書、企業向け情報提供、ゲーム性の高いもの、学術ジャーナルは含まない。また、ユーザーの電子書籍コンテンツのダウンロード時の通信料や デバイスにかかわる費用、オーサリングなど制作にかかわる費用、配信サイトにおける広告も含まない。
※2 ケータイ向け電子書籍市場 : 携帯電話の公式コンテンツ (iモード、EZweb、Yahoo!ケータイ) の電子書籍カテゴリの売上。
※3 新たなプラットフォーム向け電子書籍市場 : スマートフォンやタブレット向けのアプ リストアの電子書籍関連のアプリ (ブック、教育、レファレンス)、スマートフォンやタブレット等のビューワーアプリ経由で購入する電子書籍、Kindle やこれに類似した電子書籍配信サービス、PC・スマートフォン・電子ブックリーダーなどマルチデバイスで閲覧が可能な電子書籍配信サービス、PSPや Nintendo DSなどゲーム機向け電子書籍配信サービス等。
※4 PC向け電子書籍市場 : パソコンまたはPDA向けに配信される電子書籍の売上。マルチデバイスに対応したサービスは新たなプラットフォーム向け市場に分類したため、含まない。
※5 電子雑誌の市場規模の定義 : 電子雑誌を、紙の雑誌を電子化したものやデジタルオ リジナルの商業出版物で逐次刊行物として発行されるものとし、日本国内のユーザーにおける電子雑誌の購入金額の合計を市場規模と定義。ただし、学術ジャー ナル、企業向け情報提供、ゲーム性の高いものは含まない。また、ユーザーの電子雑誌コンテンツのダウンロード時の通信料やデバイスにかかわる費用、オーサ リングなど制作にかかわる費用、配信サイトにおける広告、コンテンツ中の広告も含まない。