【 『鉄道に取り組む全企業2014』 - はじめに - より 】
一つの産業にはいろいろな業種のさまざまな企業がビジネスでかかわります。本書が取り上げる産業にはどのような企業がビジネスを拡げ、どのような技術が有望だと考えられているのでしょうか。産業情報の一つである特許情報を紐といて産業の裾野を観るように企業と技術の現状を俯瞰し、新たなビジネスチャンスを見出すきっかけを探ります。
特許情報の性格
15世紀にヴェネチアで生まれた特許制度は特許権という独占権を発明者に与え、忠勤を励まさせる材料とするものでした。17世紀になると、独占権の代償に技術振興と技術移転を可能にする近代的な特許制度がイギリスで生まれます。現在は世界的に先願主義がとられ、先に出願した発明が優れている場合には 20年間の独占権が与えられます。同時に公開制度が整備されており、先を競って出願された発明の内容はパブリックな情報として国民に公開されます。公開された発明は次の改良発明を生み、発明の連鎖が促され技術革新によって産業が発展するという産業政策的制度になっています。なお、我が国の場合、発明を特許庁に出願して特許権を取得するためには平均で 50~100万円程度の費用がかかるといわれています。特許を取得するには、技術力だけでなく経済力も必要なのです。
こうして先を争って特許出願される発明は年間 30万件の多きにもなりますが、公開された特許情報を調べると、どの企業がどの技術分野のどのような技術に重きを置いているかがわかります。情報量の豊かさだけでなく、具体的な企業名や具体的な技術の内容を知ることができる情報ソースとして、特許情報は、株式情報や産業統計資料などに比べて勝るとも劣らない優れた産業情報なのです。
本書は、このような産業情報として優れた性格を備えた特許情報を調査しました。そして、特許出願した企業がどのような業種に属するかを調べることによって、その産業には想像を超えるさまざまな業種がかかわる実態を浮かび上がらせました。さらに、業種別に主なプレイヤ企業と、それぞれの企業が産業と接点を持たせたいとねらう具体的な技術を詳らかにしました。一つの産業にはかくも多様な業界と企業、技術がかかわっています。
特許データを活用すれば新たなビジネス参入の機会が見出せます。ビジネスチャンスを探る資料として本書をご利用ください。
本書のねらい
本書は特許情報に基づいて、産業として注目される市場に対して、どのような企業が特許出願というルートを経由して参画しており、それぞれの企業が具体的にどのような技術でかかわりをもっているのか、業種別に紐といています。
特許情報を集合データとしてマクロな視点でみる、あるいは、個々に紹介される一件一件の発明情報に迫ってミクロに内容を掘り下げてみる、さらには、業種別にどのような企業がメジャーな企業として既に参画しており、まだ出願件数こそ少ないものの、固有技術が明確な企業や異業種からも新たなチャンスを伺っている模様など、ビジネスチャンス探索の道しるべとしてご利用ください。
企業シェアや出願件数などのマクロ情報は、市場の全体状況を把握する目安となりえます。また、中核的産業だけでなく中核を取り巻くすそ野産業を俯瞰できることが、特許情報を情報源とする大きなメリットといえるでしょう。
特許情報をミクロに掘り下げてみると、個々の出願内容から企業の技術力を知ることができます。特許情報に現れるのは、数年先から 20年後を見すえた将来有望な技術です。先行する技術を知り、自社技術の方向性を見定める機会にもなります。また、特許情報は注目市場が求める技術の具体例としてとらえることができ、川上企業の潜在能力や、川下企業の技術的課題が浮き彫りになります。
本書ではさらに注目市場をいわゆる業種別に分けて企業と技術の両面からデータを紐ときました。その業種における代表的な先行企業と取り組む技術がわかります。自社の属する業種をみれば、ライバル企業の動きが把握できます。また、異業種企業や大学、研究機関の状況を知り、提携の可能性を探ってみてはいかがでしょう。
注目市場のビジネスチャンスを開拓する機会として、通常のマーケットレポートでは得られない特許情報を用いた本シリーズをぜひお役立ていただければ幸いです。
ビジネスチャンス
近年続く不況の中、大企業から中小企業、個人事業主まで多くのビジネスパーソンが、新市場への参入や新事業創出、異業種との連携、取引相手の発掘など新たなビジネスを生み出だすための模索を続けています。時代と共に、ターゲットとなる市場は様々に変化しています。エネルギーや情報通信、医療など、技術革新が進む分野があれば、農業などのように構造に変化が見られる産業もあります。また、環境問題や高齢化という社会的課題も新たな需要を生み出すでしょう。いずれもビジネスチャンスの可能性がある将来の注目市場と言えます。
ビジネスチャンス発見の手がかりは情報です。その第一歩は、注目市場の現状を俯瞰することです。俯瞰することによって大きな現われをつかみ、ビジネスチャンスを手にすることができます。さらに、個別の細かい情報にもビジネスチャンスの可能性は秘められています。注目市場において、今、どんな業種が関わっているか、どんな企業が参入しているか、どんな技術があるか、大きな取り組みだけでなく小さな取り組みまでも見渡してみることが、ビジネスチャンス発見の近道となるはずです。
本書の使い方
本書は鉄道に取り組む全企業 (業種ページ)、業種別全企業特許情報、全企業索引 (五十音順) で構成されています。それらを基に、本書の使い方をご紹介します。