▼ 『韓国スマートグリッドの動向』 エグゼクティブサマリー
スマートグリッド (Smart Grid) は、電力網 (Grid) に通信及びICT技術 (Smart) を積極活用して、供給側と需要側がリアルタイムに情報を交換し、効率的にサービスを利用することができる賢い電力網と定義される。
スマートグリッドは、バリューチェーンの変化としても説明することができる。供給側から需要側への一方的なバリューの流れから、需要側が供給者になることができる双方向のバリューの流れも出現する点がスマートグリッドの大きな特徴である。また、単純な電力供給以外に超節電家電、通信基盤の電力消費の可視化サービス、再生エネルギーを生産する住宅設備、電気自動車充電サービス、そしてエネルギーコンサルティングサービスまでスマートグリッドを通じて供給されるバリューは多様化する。つまり、スマートグリッドは電力、家電、建設、自動車、エネルギーなど多様な産業のビジネスプラットホームに活用されることができ、多様な事業者が新たなビジネスを創造することができる可能性を提供する。
韓国政府は世界スマートグリッド市場の急成長を見越して、スマートグリッドを半導体やITに続く新たな成長産業として育成することを明らかにした。2010年1月に 「スマートグリッド国家ロードマップ」 が正式に公表された中で、韓国版スマートグリッド政策の特徴は韓国内のエネルギー政策の期待効果だけではなく、輸出産業育成を目的とした政策としても位置づけられるという点が挙げられる。企業は、政府が支援するスマートグリッド実証事業と事業者連合会であるスマートグリッド協会を積極活用して、韓国国内スマートグリッドサービスの標準化を策定後、世界市場に向けて輸出へ乗り出そうとしている。
[図] 韓国版スマートグリッド政策の期待効果 (2012~2030年)
![【図】韓国版スマートグリッド政策の期待効果[韓国スマートグリッドの動向]](/upload/handload/img/roa_krsg_img1.jpg)
本レポートは、大きく分けて2つのパートで構成される。前半は、韓国の 「スマートグリッド国家ロードマップ」 及び国家戦略を分析する。韓国版スマートグリッドは、5つの分野に分けられ推進されている。具体的には電力網 (Smart Power Grid)、電力サービス (Smart Electricity Service)、消費者 (Smart Consumer)、新・再生エネルギー (Smart Renewable)、電気自動車及び充電インフラ (Smart Transportation) である。これら5つの推進分野は、世界市場のスマートグリッドビジネスを区分したものである。ロードマップは、この5分野でのビジネスモデルをまず韓国国内で成功させて、これを基盤として世界市場進出を目指すことを目的にしている。
[図] 韓国版スマートグリッドにおける5つの推進分野及び相互関係
![【図】韓国版スマートグリッドにおける5つの推進分野及び相互関係[韓国スマートグリッドの動向]](/upload/handload/img/roa_krsg_img2.jpg)
後半は韓国企業の動向について分析する。韓国版スマートグリッドの方向性が打ちだされた時点で、企業の具体的な活動及び成果を言及することは時期尚早である。しかし、SK、KS、LG、サムスンなどの韓国有力グループ企業が、韓国政府によるスマートグリッド実証事業に参加しており、スマートグリッド事業開発競争や協力体制が生まれてきている。また韓国電力、LS産電、SKテレコム、KT、ヌリシステムなどにより、米国スマートグリッド消費者市場に進出するための動きも見え始めている。これら事業者のスマートグリッドビジネスモデルの定義と推進の方向性を分析する。
[図] 韓国版Smart Placeアーキテクチャの概要
![【図】韓国版Smart Placeアーキテクチャの概要[韓国スマートグリッドの動向]](/upload/handload/img/roa_krsg_img3.jpg)
本レポートでは、韓国版スマートグリッドが最終的にはグローバル市場への輸出戦略であることを一貫して言及している。したがって、スマートグリッドの技術的イシューから離れ、韓国政府と韓国企業のビジネス戦略を考察することに焦点を合わせた。日本国内企業にとって、世界市場におけるスマートグリッド活性化は、新・再生及び電気自動車関連ビジネスを拡大させる絶好の機会である。さらに、韓国版スマートグリッド戦略を理解することは、ICTを基盤とした融合技術によって、グリーンエネルギー技術だけではなくエネルギーネットワーク技術まで、世界市場へ参入する戦略を構築する上で有益となるであろう。