▼ 『日本携帯電話2台目市場の現状と展望』 エグゼクティブサマリー
~ レポート紹介 ~
2台目市場が国内の携帯電話市場を救う - そんなキーワードが巷にある。果たしてそうだろうか。日本の携帯電話市場の普及率は80%強であり、100%を超えている海外の携帯先進国からみれば、まだまだのびしろはありそうとも言える。ただし、ここで明確化しなければならないのは、2台目市場というキーワードはそもそも、国内で低迷し始めた携帯販売台数のV字回復ネタとして注目されたのであり、詰まるところ国内の携帯メーカーを救う手立てとして議論に上ることが多いと言える。つまり2台目市場を端末販売の点で見る限り、携帯サービス加入者数をベースとする普及率と2台目市場とは、正確な意味において因果関係はあまりないのである。
それでも2台目市場と携帯普及率がどうしてもセットで語られてしまう背景には、おそらく我が国特有のキャリア主導による垂直統合型ビジネスモデルが起因しているからであろう。SIMロックが当たり前の同ビジネスモデルでは、契約件数の増加はそのまま携帯電話機の販売台数増につながるからだ。日本にとって2台目市場の発展とは契約件数増でもあり、かつ端末の販売台数増でもあることを意味することになる。
しかし、現実は果たしてそうであろうか。昨今の契約件数は飽和市場の中で成長鈍化と言われながらも右肩上がりを続けており、新興のイーモバイルを含む携帯キャリア各社もおおむね契約数ではプラス傾向を維持している。ところが一方で、ハードウエアである携帯電話機の販売台数はどうであろうか。2008年以降の予想をはるかに超えた惨憺たる結果を見れば、双方に比例的な因果関係がないことは自明の理である。
その謎解きの答えは簡単である。契約純増数と同数の新規端末販売台数は存在するものの、それを上回る販売台数の減少がトレードオフし、なおかつ販売数を押し下げているのである。それはユーザーの買い替え需要が減少したからにほかならない。それでは、2台目市場はキャリアを喜ばせるだけで、メーカーには何の影響もないのであろうか?実はキャリアにとっても、収益面でそれほど旨味のある市場とは言い難いのである。2台目市場を求めるユーザーは、法人も個人も安価な定額音声サービスか、あるいはiPhoneのようなユニーク端末の保有が目当てであり、いずれもARPUに大きく貢献してくれるというわけではない。せいぜい、月間契約純増数を銀行融資上の達成指針 (基準) としているキャリアにとって、財務上のリスク管理の点から安堵する程度であろう。
それでは、改めて2台目市場は低迷し始めている日本の携帯電話市場の起爆剤とはならないのであろうか? 結論を言うと、市場に少なからず影響はあるものの、有識者が論じるほどのインパクトはないと考えるのが、本レポートにおけるROA Groupの分析である。
[図] 2台目市場規模予測 (2008~2012年)
![【図】携帯電話2台目市場規模予測(2008~2012年)[日本携帯電話2台目市場の現状と展望]](/upload/handload/img/roa_jmm2_img1.jpg)
これまで、2台目市場に関して大規模な統計もしくは調査を行った経緯はない。2台目市場を正確に定義する場合、1台目市場をも正確に定義する必要があり、現在の公表ベースの契約者数や端末の販売台数も改めて1台目と2台目で分類する作業も必要となる。そういう意味で正確な2台目市場を定量的に分析するアプローチは、多くの不確定要素と推測を明らかにしなければならず、解釈の違いや整合性の疑問点も多々出てくるため、事実上、分析は不可能であると言える。
そのため、本レポートではあらかじめ2台目市場となり得る市場3区分を分析・定義し、それぞれについて2台目以上を持つと思われる加入件数の予測値を累積ベースで試みた点をご了承いただきたい。
いずれにしても、国内メーカーをはじめ、2台目市場に対するアプローチや今後の戦略方向性については出来る限り指し示した内容となっている。本レポートが、携帯電話市場に関わる関係各社の今後の一助になれば幸いである。