▼ 『韓国WiBroサービスと事業戦略』 エグゼクティブサマリー
2006年6月30日、韓国版モバイルWiMAXである 「WiBro」 の商用サービスがスタートした。しかし、KTが加入者数の拡大を目指してマーケティングを強化する2007年初期までは、不十分な設備投資や、カバーエリアの狭さ、そして対応端末のラインナップの乏しさなどから、加入者数は伸び悩んでいた。
KT および SK Telecom (SKT) 両社は当初の投資計画として、2007年までにそれぞれ7,000億ウォン (KT) および4,000億ウォン (SKT)、そして 2010年までに1.2兆ウォン (KT) および7,000億ウォン (SKT) 以上を費やす予定であった。しかしながら、実際の投資額はその当初計画案から、かなりかけ離れた金額であった。それでもKTのWiBroサービス加入者数は、2007年に入ってWiBro販促を強化し始めてから急激に増加し始めた。2007年4月時点の加入者数は5,600件だったが、同年12月には10万6,000件まで拡大。2008年には、毎月約10,000件ベースで増加傾向をたどっている。
KT および SKTは、2008年からの投資拡大を決定し、WiBro市場はさらなる成長が見込まれている。その上、VoIP実用化は加入者数拡大の面で、大きな影響力を与えると期待がかかっている。しかしながら、これにはまだ時間がかかるという意見もある。つまり、韓国ワイヤレス市場における政策、及び、その他諸問題により、VoIPがすぐにはサポートされそうもないという見方が強いためである。
このような状況にもかかわらず、WiBroの普及見通しは決して悲観するものではない。2007年のWiBro加入者数はわずか約10万件だったが、 2008年には25万件に拡大し、2011年に至っては250万件以上に達すると見られている。総利益に関しても、2011年までに650億ウォンまで増加すると期待されている。
と同時に、技術向上もサービス拡大のための重要なファクターである。韓国電子通信研究院 (ETRI) は、LANの技術をベースにした 「NoLA (New Nomadic Local Area Wireless Access)」 と、WiBroのアップグレード版である 「NeMA (New Mobile Access)」 を開発した。「NoLA」 は、徒歩や車内といった低速で移動するユーザー向けのモバイルインターネット技術である。この伝送速度は 3.6GMbpsで、現在の3Gデータ通信速度より1,000倍速いという。一方、「NeMA」 は、高速で移動するユーザー向けの技術であり、最速 120Km/hで移動しながら100Mbpsでインターネット利用が可能だ。ETRIは、これら2つの技術を連動させる予定である。もし成功すれば、 2009年に韓国において高速道路で移動しながらインターネットを利用することができるようになる。
一方のHSDPA陣営は、次世代HSDPAの開発を進めている。HSUPA (High Speed Uplink Packet Access) ネットワークでは、5.76Mbpsのデータアップロード速度が実現する。加えて、OFDMやMIMOなどの次世代技術を利用するLTE (Long Term Evolution) は、世界的に拡大しつつある。
現在、WiBroサービスにとっての最大の弱点は、キラーアプリケーションが提供できていないことだ。4Gに移行すれば、音声サポートはWiBroにとって欠かせないものとなり、HSDPAや3G/4G市場におけるLTEと競合するためには必須要素となるであろう。
[図] 韓国WiBroサービス加入者数予測 (2007-2011)
![韓国WiBroサービス加入者数予測(2007-2011)[韓国WiBroサービスと事業戦略]](/upload/handload/img/roa_kwbs_img1.jpg)