▼ 『日本VoIPサービスの現況と今後の市場予測』 エグゼクティブサマリー
技術用語から始まったVoIPが、IP電話のビジネス用語としても一般的に使われるようになったのはかなり前からである。特に050 IP電話、0AB~J ひかり電話が、ADSLやFTTHの一番ポピュラーなアプリケーションとして位置づけられている国内の通信市場ではさらにその傾向が目立つ。
本レポートでは、IP電話ビジネスの成り立ちに関する考察を行なった。特に、上記で例を挙げた050 IP、0AB~J IP電話のように、従来の電話サービスであったPSTNとの相互接続を通じて、昔からの通信サービスを代替しているIP電話ビジネスのポジションを分析し、国内市場における中長期的なIP電話サービスの展開シナリオを予想することを目的としている。
[表] マスマーケットをターゲットにしたIP電話の領域 (本レポートの分析領域)
![【表】マスマーケットをターゲットにしたIP電話の領域[日本VoIPサービスの現況と今後の市場予測]](/upload/handload/img/roa_jvps_img1.jpg)
本レポートでフォーカスした一般電話サービスとしてのIP電話は、結果的に発着信番号を割り当てられるビジネスモデルである必要がある。電話サービスにおけるIP電話市場の成長度は、IP電話番号の割り当て規模をその指標とした。
上記の表にように、ROA Groupが定義したIP電話サービス体系において、さらに固定型IP電話番号と移動型IP電話番号を区分し、これについて2011年までの国内IP電話番号割り当て規模の予測を行なった。ブロードバンド回線と統合されたサービスとして既に国内市場で定着している固定型IP電話に続き、2008年以降はインターネットフォン、そして2009年からはFMCワンフォン形式のIP電話割り当てが期待されている。また、2011年以降にはインターネットフォンやワンフォン形態のモバイル型IP電話番号の規模が固定型IP電話番号の規模を上回り、IP電話においてもモビリティ (移動性) が保障される段階へと進歩していくと予想される。
[図] 国内IP電話番号割り当て規模に対する予測
(固定型IP電話市場の持続的な成長及び2011年移動型IP電話の逆転に関する予測)
![【図】国内IP電話番号割り当て規模に対する予測[日本VoIPサービスの現況と今後の市場予測]](/upload/handload/img/roa_jvps_img2.jpg)
一般向け電話市場に参入したIP電話は、いうまでもなく政府の通信政策に直接的な関連性がある。よって上記図のように予測を導き出すにあたり、国内IP市場の展開シナリオには、050、0AB~Jに関する政策に加え、FMC電話番号に関する政策推進スケジュールが反映されている。またその他にも、国内のブロードバンド回線及びモバイル回線加入者規模について、ROA Groupによって予測された2011年までのデータが反映されている。
IP電話は、エンド-ツー-エンド (End to End) の経路を保障する回線方式の電話方式から、多層的構造のパケット交換方式へ電話事業者のビジネスが変化することを指す。既に固定通信事業者の売上構成を崩し、再構成されたIP電話が、今や移動体通信事業者の音声売上に多大な影響を及ぼすとみられ、これにより今までよりもさらに激しさを増した価格競争に発展するだろう。
IP電話事業にスポットを当てて分析した本レポートが、移動体通信事業者やビジネスパラダイムの調整期にチャンスを狙う事業者にとって参考になれば幸いである。
~ 調査範囲 ~
本レポートは、従来の電話サービス市場の代替商品として利用できるIP電話を調査の対象とした。全体は4部で構成されており、第1章ではIP電話商品について独自のカテゴリを定義付け、第2章では政策、技術、プレイヤーの面からグローバル市場におけるIP電話ビジネスの方向性を調査した。第3章は、国内市場のIP電話商品とそのビジネスについて分析した。特に総務省が発表したFMC電話番号割り当ての原則が、今後移動型IP電話市場の活性化のカギになると考え、現在市場に出ている商品のポジショニングと今後の方向性について分析を行なうことにフォーカスした。第4章は、第3章に引き続き、国内IP電話ビジネスの今後の変化をまとめる里程標として、ブロードバンド回線に統合した固定型IP電話番号と移動型IP電話番号の市場規模を予測した。
本レポートは、固定通信事業者だけでなく、移動体通信事業者がIP電話による影響に備えなければならないという視点からも企画されたものであり、今まで移動体通信産業にフォーカスしてきたROA Groupとしては、その調査範囲を移動体通信外へと広げたものである。ただし、本レポートでより具体的にスポットを当てた事業者は、移動体関連事業者が多く、これはROA GroupのIP電話のこれからを見る観点が、移動体通信事業者との競争領域や彼らのコンバージェンス領域であるためである。
~ 調査プロセス ~
本レポートの分析については、2000年から今までの国内通信市場の概要を参考にし、2007年以降のIP電話事業者の動きを集中的に調査した。特にIP電話番号の割り当て規模予測においては、定期的にROA Groupが発行している 「日本携帯電話市場の予測」 の独自の方法論による予測方法に基づいて適用した。同レポート内で扱っていないPHSを含めた移動体通信契約者の需要予測を行ない、別途ブロードバンド回線の需要予測も並行して実施し、国内IP電話番号割り当て規模を予測するための基本データとして利用した。この予測方法は、通信市場におけるキープレイヤーであるキャリアについての基本調査 (Primary & Secondary)、およびROA Groupの社内レポートやデータベース、蓄積されたノウハウに基づいて行われている。また、一部の方向性予測においては、定性的な要素に基づいている。